2010年の日本経済と民主党政権の新成長戦略を考える

murakyut2010-01-02

明けましておめでとうございます!
今日は、小江戸・川越へ七福神廻りををかねて初詣に出かけ、川越大師・喜多院で参拝してきました。 おみくじを引くと、吉。
久しく曇っていた空もようやく晴れ渡り、すっきりする。 心配事もなくなり、願望、後になって叶えられる。 まぁ、景気が未だ晴れない中にあって、そうなってくれるといいなと思う、そこそこ悪くない新年の御託宣でした。
ここを訪れた方々の新年のご多幸をお祈り申し上げます。
さて本題。年始なので2010年の日本を考えてみる。

2010年の日本
2010年の日本を展望してみる。2010年は日本のGDPが中国に抜かれて世界第3位に転落する大きな転機を迎える年だ。
2010年度の税収37兆円に対して新規国債発行額は過去最大の44兆円で、政府債務残高のGDP比は200%の大台に乗ると言われている。これは第二次世界大戦時並みの過去最悪水準だ。
2010年度一般歳出は当初の55兆円から、あの事業仕訳などにより公共事業費を中心に約2兆円削減され、社会保障関連支出の増加もあり53兆円に留まった。ここまで財政収支が悪化した最も大きい要因は、企業業績悪化などにより税収が1990年度の過去最高税収60兆円に比べて6割程度まで下落したことが大きい。
ここで必要なのが企業業績の持続的回復、いわゆる成長戦略だ。民主党政権は昨年末の12月30日に新成長戦略を閣議決定した(発表内容はこちら)。「環境・エネルギー」「健康(医療・介護)」など、日本の強みを生かし、更に「アジア」「観光・地域活性化」などのフロンティアを開拓することによって2020年までのGDPの平均成長率を名目で3%、実質で2%を達成し、2020年度名目GDP650兆円を達成するというものだ。今年6月までに新成長戦略の最終とりまとめをして成長戦略実行計画表(工程表)を策定するという。戦略というからには工程表に加えて、具体策、税財源の明確化が必要になるが、その具体策の中身も単なる予算の再配分だけではなく過去の経験にはない斬新な切り口が必要になるだろう。
日本には2つの大きな財産があり、1つは技術の蓄積、2つめは1400兆円の個人金融資産がある。この2つの大きな資産を新しい切り口でどのような成長投資に向けてゆくかが問われるのだと思う。

世界の抜本的な変化への感度が足りず、意識改革が求められている日本
2010年は、かつての米国の過剰消費型依存型の膨張経済が剥落したデフレ経済の中で、贅肉を落とした縮小均衡と成長という一見すると矛盾した戦略でスタートを切る必要がある。
また、日本企業を取り囲むグローバルな競争ルールは一変している。
その世界的な競争ルールの一変をもたらしている大きな理由の1つが、これまで私が評論してきたグローバルベースでのICTの進歩だ。ICTの進歩は「国境」や伝統的な「業界」の境界線を消滅させ、ハードとソフトの融合、製造とサービスの融合、Webの進化によるオープン・ソース化やソーシャル化による集合知を活用した新たな創造・生産をもたらしている。
石倉洋子著の「戦略シフト」によれば、こうした技術環境の変化が、企業の利益追求と社会的責任、グローバルとローカル、一国の経済成長と持続的社会の維持など従来、二律背反と捉えられてきた関係が協働できる多様かつ複雑な事業形態を生んでいるという。
ただ、日本企業の問題点は、こうした世界の抜本的な変化への感度が足りないため、意識と行動の改革が求められている点だ。


日本の2つの大きな財産の望ましい活用の仕方
こうした中で、日本の2つの大きな財産の投資が次のような形でなされる環境作りが政府の手で早急に作られる必要があると思っている。まず、蓄積された日本の技術力は、自社技術中心のコモディティ型ビジネスモデルではなく、製品・運用サービスを併せたトータルシステム提供モデルの中で活用されることが、新たな成長につながる鍵になると見ている。この理由については、11月18日付エントリー「技術力で勝る日本がなぜ事業で負けるか」でも述べた通りだ。また、ベンチャー企業のアントロプレナーシップが大企業の新しいビジネスモデル創出と連携する創発環境作りなども大事だろう。こうしたビジネスモデル変革への環境作りが21世紀型企業の競争環境の整備ということだと思う。
また、1400兆円の個人金融資産については、銀行預金や国債への投資ではなく株式・債券市場への投資を通じて日本企業の国内成長投資は基より今後の成長市場であるアジア・新興国へのM&A資金に向かい、海外からの配当などの投資収益収入となって帰ってくるような仕組みづくりが必要だろう。

2010年の株式市場は、新興国の成長に支えられながら過剰流動性に企業業績の改善が加わり長期上昇相場の明るい展望
一方で、金融市場の動向に目を向けてみると、金融市場は世界的な巨額の財政出動による過剰流動性の超金余り状況が続いている。また、米国の猛烈な財政支出で増加した米国債の最大の投資家は世界最大の外貨準備を誇る中国であり、中国が米国の財政赤字を支えつつ、中国の高いGDP成長が世界経済を牽引していく構図は変わっていない。
2010年も基本的に先進国よりも高い経済成長を維持する中国、インド、ブラジルなどの新興国の株式市場がこうした過剰流動性の受け入れ先になっていく状況は変わらないだろう。
その中で、日本の株式市場についての見通しは意外と明るいだろう。私の知り合いのストラテジストの意見によると、2009年11月末にかけては急速な円高の進行で株価が下落したことはあるものの、こうした急激な円高がなければ2010年の企業業績予想も上方修正余地を残しており予想PER 20倍を前提とすれば、日経平均株価は高値で13000円程度もありうると見ている。日本の財政収支悪化による日本国債格下げ懸念もあるが、世界の中での相対的な経済基盤の強さを考えれば、株式相場では織り込み済みで懸念材料にはならないだろう。
2010年は流動性相場から業績相場に移行し良好な上昇相場が続く可能性が高いと思われが、株式投資コンサルタントの春山昇華氏は、12月30日のブログ・エントリーで「悩み多き日本株だが、前を向いて見よう」と述べている。春山昇華氏のコメントによれば、2010年は市場のセンチメントが懸念から期待に移り、株式市場への資金流入も増え長期間にわたって上昇が続く、上昇の第二フェーズに入ると見ている。懸念に支配されながら短期間に急騰する第一フェーズは2009年9月に終了し、10月からは上昇の第二フェーズに入っているものの、2010年はこれが本格化する年だと見ている。また、年末に示された新成長戦略についても、民主党参議院選挙での勝利のあとに、経済再生=GDP拡大=利益増大だと、徐々に打ち出すことになると見ているようだ。現在は民主党には経済ブレーンがいないなど揶揄されているものの、政権に擦り寄るエコノミストなどが今後は増えてくる可能性も高く、民主党政権が年末に打ち出した成長戦略実行計画表(工程表)の実効性も増してゆくとの楽観的な見方をしている。足元日経平均株価は11,000円を伺う好調な滑り出しとなっており、比較的穏やかに前向きに捉えてよさそうな1年になりそうだ。 
(1月10日追記)

戦略シフト

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