2011年の課題 〜上海からのメッセージを踏まえて

明けましておめでとうございます。
三が日は、中日の2日に深川の富岡八幡宮に初詣に行ってきました。おみくじは小吉。
運勢は冬来たりなば春遠からじ、ようやく開運のきざし見え始めたり。方針、地盤を作れ。希望、七分まで叶う。まさに今の日本経済の新年の門出を象徴しているような御託宣。
病が癒えきらないような中での出発ですが、ここを訪れた方々の新年のご多幸をお祈り申し上げます。

さて、本題。昨年は色々多忙だったこともあり、このブログエントリーの更新はかなり少なくなってしまったが、その間に書いたエントリーを読み返してみると、如何に世の中も停滞していたかがよくわかる。2011年の課題と題してみたが、昨年1年間書いてきたエントリーが基本的にはそのまま当てはまる1年になりそうだ。
昨年書いたブログエントリーの主なタイトルだけ斜め読みすると、新産業育成とベンチャーキャピタル充実の必要性(2010年1月11日)、逆転のグローバル戦略〜ローエンドから攻め上がれ(2010年2月7日)、アジアの時代〜オープン型モノ作りが市場を制する(2010年4月4日)、脱ガラパゴス戦略と逆転のグローバル戦略(2010年6月13日)、日本でなぜiPadが作れなかったのか(2010年6月27日)、日本経済を第三の道へ向かわせるという力を感じるも着火の兆しなし(2010年8月17日)、グローバル維新〜尊王攘夷から勤皇開国へ(2010年12月30日)。自画自賛する訳ではないが、今、読み返しても現在にそのままあてはまる課題ばかりのように思える。

上海からのメッセージ
年始に、昨年末、上海に赴任した友人から新年の挨拶メールをもらった。
友人は、上海で遭遇した中国で起業した中高年の日本人と遭遇した印象をこう語っている。
(以下、引用)

これまでの蓄積した経験知見、技術力ある日本人が、その素晴らしい能力を如何なく発揮する働き方を取り戻せば、どうして世界に負けようかと思います。「日本の失われた20年」と言いますが、知らず知らず、或いは何となく気づいているが変えないだけで、自ら自分たちを縛っているのではと感じます。それを解き放てば再び未来を開く機会を手にできると彼らを見て感じます。そういう意味で、自らの働き方・支える生き方を常に見直していかなければと改めて強く感じた次第です。

(以上、引用)

「本の技術に自信を持ち、自らを縛っているわだかまりを解き放ち、自らの働き方・生き方を常に見直せ」というメセージは改めて我を振り返る言霊となった。だが、今の日本企業には「自信を持て」という気合だけでは立ち直れない崖っぷちまできていると思う。

企業活動に求められる具体的な開国策 〜日立ディスプレイズへのホンハイ社出資報道を考える
12月30日のエントリーで、「グローバル維新〜尊王攘夷から勤皇開国へ」を書いた。実は、具体的なアジアの成長性を取り込む事業再編のアクション例として、12月27日と28日の日経新聞で掲載された、中小型液晶パネルを生産する日立ディスプレイズ(日立DP社)の千葉県茂原工場の建設に対して、世界最大手のEMSのホンハイ社が最終的に株主シェア70%程度の1000億円の出資に応じ、同社の経営立て直しを図ろうというもの。
日立DP社は、これまで少量多品種の注文が多い国内の携帯電話メーカーが主要顧客だったこともあり、5年以上にわたり最終赤字が続いてきた。ホンハイ社はApple社のiPhoneiPadの大部分を受託生産しているため、ホンハイ社の経営傘下に入ることで日立DP社は一気にグローバル生産受託が可能になる。一方、日立グループは、市場変動リスクの多い中小型液晶パネル事業をグループ事業から切り離し、安定成長性の高い鉄道関連などの社会インフラ事業に経営資源を集中できる。
こうした報道に対して、これまでアジア・新興国への技術流出を恐れて、外国企業の出資規制を指導してきた経済産業省は、本件は企業が個々で話をしていることなので関知しないとしながらも、台湾メーカーによる経営権の譲渡については否定的な見解を示しているようだ。しかしながら、証券市場はこの一連の報道を評価しており、その後、日立の株価は上げている。
私は、資本市場の評価を得ながら企業価値をグローバルに向上させていこうとする本来の正しい企業成長モデルの原点に返るならば、こうした日立グループ選択と集中を通じてアジア・グローバル市場を取り込む戦略は正しいと思っている。

グローバル化維新〜1つの処方策
確かに、技術流出は避けたことに越したことはないが、近い将来、陳腐化が予想される技術や不安定な事業キャッシュフローが予想される事業かどうかの取捨選択が事前になされるのであれば、価値が高いうちに取捨選択を行い手放してしまうという戦略はビジネスセンスとしても理にかなっていると思う。
たまたま日立ディスプレイズの事例を取り上げたが、今年、企業活動に求められる行動は、こうした現在の技術が将来どのようなキャッシュフローを生むかを事前に予測してグローバル・ビジネスの可否の観点から、どのように取捨選択して前進するかではないかと思う。
これは決して、基礎技術開発や日本が得意とする擦り合わせ技術などを軽視する話ではない。こうした技術に自信を持つことは当然だとして、その技術を活かした成果がグローバルでどのようなビジネスまで展開できるかを見通して判断することが求められているように思う。
良い意味でのM&Aや提携戦略が重要になる1年かもしれない。