オープンソース化がICT企業の成長の鍵に?

murakyut2008-08-24

21世紀のICT企業の成長の鍵を考えてみた。企業は、テクノロジー開発コスト上昇と製品ライフサイクルの短期化への対応が求められている。その解決策は、ビジネスモデルのオープンソース化なのだろう。
20世紀は日米欧先進国では巨大な研究開発組織が各地で作られた。その後、中国、インド、イスラエルなど多様な国で数多くの研究所が作られ、研究開発組織の数が増加し、研究開発費の費用対効果が求められたため、企業は開発資金を「研究」からビジネスに軸足を置いた「開発」へシフトさせつつ、特許権による囲い込みを進め、研究開発組織を縮小している。

グローバルで様々テクノロジーやビジネスアイデアが開発される中で、企業は、もはやすべての自前主義を捨てざるを得なくなってきている。
寧ろ、企業価値向上で成功しているICT企業では、社外のアイデアを今まで以上に活用し、未活用のアイデアを他社に今まで以上に活用してもらうことが新しいイノベーションを引き起こす原動力になっている。
そこでは、企業が自社のビジネスモデルのオープン化を進め、より多くの社外のアイデアやテクノロジーを取り込み、より多くの社内知識を公開することが求められる。
これにより、イノベーションのコストの削減が図れる一方で、市場投入期間の短縮化や他社とのリスクシェアの可能性が生まれ、大幅な効率化が進むことにを提供できるようになる訳だ。
残念ながら、日系ICT企業のオープンソース化の意識はかなり遅れている。

そこで、海外ICT企業でオープンソース化で成功しているクアルコム社とIBMのケースを紐解いてみることにした。

クアルコム社の取組み事例
オープンソース化で業態転換までして成功したICT企業の代表例として、携帯電話テクノロジーメーカーのクアルコム社(Qualcomm)がある。当社は、もともと携帯電話機と基地局製造事業に携わっていたが、1999年、エリクソンとの知的財産権の紛争解決の結果として同社の携帯電話機と基地局事業をエリクソンに売却・撤退し、新しい周波数変調方式CDMAのICチップのみを製造し、他社に対してテクノロジー・ライセンス供与だけ行う事業体に変わった。

IBMの取組み事例
巨大コンピューターメーカーのIBMも、1990年までは、メインフレーム事業を中心のテクノロジー主導型企業だったが、1992年の財務危機を契機にルイス・ガースナーをCEOとして招聘し、以降、メインフレーム事業中心から、半導体事業、知的財産のライセンス管理事業、オープンソースソフトウェア事業のオープンソース化を一気に進め、高収益ICT企業に事業転換した。
具体的には、
(1)半導体事業では、半導体生産ラインの他社製品のIC製造工場として提供することによる稼働率の向上や他社と半導体プロセス開発のアライアンス化により、コストとリスクを分散、
(2)知的財産のライセンス管理事業では、IBMの特許、テクノロジーの他社への使用許諾化により、ライセンシングのオープン化を実施、
(3)オープンソースソフトウェア事業では、Linuxを中心に据えた新しいSIビジネスモデルの構築
を図った。
その後も、コモディティ化したDRAM事業、フラットパネルディスプレイ事業、HDD事業、PC事業(中国Lenovoへ売却)からは容赦ない撤退を行う一方で、
(1)次世代の半導体技術開発(Cellなど)
(2)次世代コンピューターアーキテクチャ
(3)クラウドコンピューティングに対応した次世代データセンターの開発等
(4)複雑なビジネス問題を解決する数理技術
には積極的な投資は続け、経営資源投下の選択と集中を徹底している。
その結果、次世代のコンピューター・ソフトウェア分野、高付加価値のビジネスソリューションサービス分野でのリーディングカンパニーとして日本の同業企業に比べて高い利益率の事業展開を図っている。

ITインフラのクラウドコンピューティング化が進む今後10年を見渡したとき、基幹ICT企業のオープンソース化の遅れは、更に国際競争力の低下を招きはしないだろうか・・・


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