相次ぐM&Aの現実〜日本人飛ばしが始まる

日経ビジネス1月12日号で「相次ぐM&Aの現実〜日本人飛ばしが始まる」という特集記事が掲載された。オープンネットワーク経済化ということとも、どこかで関係してくるような気がするので呟きを書いてみる。

ICT業界的にはクラウド・コンピューティングに代表されるようなグローバル・オープンネットワーク化へのパラダイムシフトが本格化しようとしている。一方、経済・ビジネス的には、サブプライム金融危機に端を発した世界同時不況下の急速な株価下落と円高化で、2008年以降、日系企業による外資系企業の大型M&Aが活発化している。

2008年4月には武田薬品工業が米国ミレニアム・ファーマシューティカルズを買収(約9000億円)、6月には第一三共がインドのランバクシー・ラボラトリーズを買収(約3700億円)、7月には東京海上HDが米国Fヒラデルフィア・コンソリデイテッドを買収(約5000億円)、TDKがドイツのエプコスを買収(約2000億円)、8月にはリコーが米国アイコンオフィスソリューションズを買収(約1700億円)、9月には塩野義製薬が米国サイエル・ファーマを買収(約1500億円)、野村HDが米国リーマン・ブラザーズを買収(約240億円)、10月にはサントリーニュージーランドのフルコアを買収(約750億円)、11月には三菱レイヨンが英国ルーサイト・インターナショナルの買収(約1500億円)という具合だ。

僕は、今年1月2日のエントリー「2008年の回顧と2009年の展望」の中で、「世界の投資家がJapan PassingならぬJapan Nothingと揶揄した根本基調が改善された訳ではなく、オープンネットワーク経済化は、何もコンピューター技術論に留まる話ではない、こうした組織マネジメントの柔軟化を進める起爆剤であって欲しい」と書いた。
クラウド・コンピューティングが目指すグローバルベースでのオープンソース化や仮想化は、そのシステムを使う企業経営者の組織・人材マネジメントが同様に変革されないとワークしない車の両輪のような関係にあるのだと思う。

これまで、日本的なM&Aでは買収した企業の色に買収された企業を染めて行く純潔主義化が伝統的なやり方だった。日経ビジネス1月12日号では、最近の海外企業買収のM&Aでは、まさにグローバル人材の最適配置を目指し、従来のガラパゴス的人材運用を破る「ジャパニーズ・パッシング(日本人飛ばし)」の取組みが進んでいるという。

2008年9月の野村HDによるリーマン・ブラザーズ買収では、欧州・アジア太平洋地域中心に旧リーマン出身者20人超を部長クラス以上のポストに付け、出身母体関係なしに完全な実力主義での新チーム作りを行った。
2006年に英国大手ガラスメーカーのピルキントンを買収した日本板硝子は、2008年6月、統合会社の社長にピルキントンのトップであるチェンバース氏を据えた。国内工場長の一部には旧ピルキントンの外人工場長を就けている。一部のマスコミでは事実上、ピルキントンによる日本板硝子の逆買収ではないかとのコメントも出ていたがそうではないようだ。

2003年に日立が米国IBMのHDD部門買収して発足した日立グローバルストレージテクノロジーHGST)でも、当初、日立とIBMの出身者が同じ部署のトップに2人並ぶ人事体制を敷いたため、意思決定が遅れ業績悪化を招いた。その後出身母体を無視して登用する人事を断行したことで、人材運用を刷新したことにより2008年度第2四半期では営業黒字を達成するまでに業績が改善している。

グローバル人材に求められる資質の要件として、「自国発の視点」ではなく「俯瞰視点で世界を見る」、「一方の価値観に合わせる」のではなく「相互理解で新しい価値観を生む」ことが必要とされている。
海外企業買収のM&Aで、統合効果を出すためには人材運用のグローバル・オープン化が不可欠になっているといえよう。

これまで日本企業の情報システムも日本純血主義的な組織運営に沿った設計思想により、過度なカスタマイズ化が行なわれ、高コスト要因にもなっていたと思われる。

2010年以降の経済再浮上に向けて構造変化が求められる2009年は日本企業にとって組織・人材運用のグローバル・オープン化もICTの環境変革とあわせて同時変革が求められるように思われる。
会社の現場では相当な不協和音が生じることになろうが・・・

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