潜行してクラウド化が進むAmazon.com 〜巨大なクラウド・インフラ会社へ進化中

米国のAmazon.comが1月29日に発表した第四半期(10〜12月期)の3か月分の決算は、売上高は前年同期比18%増の67億400万ドル、純利益は同9%増の2億2500万ドル。2008年度の12か月分の通期では、売上高は前年比29%増の191億7000万ドル、純利益は同36%増の6億4500万ドルと、堂々とした2桁成長を実現したと発表している。
Amazonマイクロソフトやグーグルと異なり、書籍の在庫や物流システムを持つEコマース・プラトフォーム会社であるため、そのコスト負担から両社に比べれば利益率も低く収益モデルも異なる。
Amazonは、書籍から日用品に至るまで幅広い提供商品の拡大を進める一方で、低価格、自動レコメンド・サービス、送料無料サービスなどの徹底した顧客サービスを愚直に追及している。電子書籍リーダーKindleの販売も始めており、第四半期の売上げ貢献でもKindleの需要が非常に高くKindleのコンテンツは23万に達しているという。
一方で、Amazonは、昨今話題のクラウド・コンピューティングの有力なサービス・ベンダーとしても世界最先端を行っている。日本の大手ITサービス企業の幹部に聞いてもAmazonクラウドコンピューティングの技術力には舌を巻く。

Amazonが取り組んでいるクラウドサービスは、EC2 (Elastic Compute Cloud)と呼ばれる時間貸しのユーティリティ・コンピューティング(演算処理能力)の提供サービスと、S3(Simple Storage Service)と呼ばれるオンライン・ストレージの提供サービスと、Simple DBと呼ばれるEC2やS3と連携して動作する簡単な分散データベース提供サービスの3つだ。それもユーザーとしては、資金のないベンチャー企業だけではなく、ナスダック証券取引所ニューヨーク・タイムズ、フィリップス、サンディスク、イーライリリーなどっそうそうたる大手有名企業が利用しているというからその技術力たるや驚きである。

クラウドコンピューティングのサービス形態には、アプリケーションを提供するSaaS(Software as a Service)、開発プラットフォームを提供するPaaS(Platform as a Service、ハードウエアなどのインフラを提供するIaaS(Infrastructure as a Serviceの3種類が存在する。Amazonが提供するのはIaaSであり、SaaSやPaaSを提供するSalesForce.comとも違う。SaaSに取り組もうとしているマイクロソフトとも異なる。SaaSやPaaSに比べるとIaaSの収益性は低いが、Amazonはそもそも収益性の低いEコマース・プラトフォームというインフラ事業者だからできる事業なのだ。

なぜ、AmazonはIaaSのサービスへ進出したのだろうか。
 Amazonは毎日数多くの注文を短時間で裁き、商品を倉庫から適宜タイムリーに発送するためには、大規模なスケールでリアルタイムで処理するシステムが不可欠になる。このコアのビジネスで培った技術や運用手法をクラウド・ビジネスへ展開した結果が、IaaSサービス事業な訳だ。そして、今やこのIaaS事業が読みたい書籍がリアルタイムでオンラインで購入できて持ち歩ける電子書籍リーダーKindleや、DVDなど映画のダウンロード・サービスに繋がっている。瓢箪から駒のような斬新なビジネス展開が面白い!
技術面でもAmazonは、EC2では、ハードウエアの上に米ゼン・ソースの開発する仮想化ソフトウエアを乗せて提供しており、仮想化ソフトの上で動くサーバーOSも、サン・マイクロシステムズの「OpenSolaris」「Solaris Express Community Edition」だけではなく、LinuxWindows Server 2003にも対応して世界最先端のITを駆使している。

日本の楽天にはこうした最先端のテクノロジーはない。日本のITベンチャー企業と呼ばれる会社にこうした本当の意味でのテクノロジー会社がないのが寂しい限りだ。
一昔前にはライブドアなどが先端IT企業などと持てはやされた。なぜ、日本の多くの人々は。こうした先端テクノロジーを持たないIT企業を先端企業として持てはやすのだろうか?

恐らく、今回の大不況の中でこうした根無し草の日本のITベンチャーと呼ばれた企業の多くが淘汰されていくのだろう。

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