「Hot Pepper ミラクル・ストーリー」から分かる儲かるネットビジネスの秘訣

リクルートホットペッパー事業部長で同誌を4年で売上高約300億円、営業利益約100億円の事業に育て上げた平尾勇司氏が体験談として書いたリクルート式「楽しい事業」の作り方、Hot Pepper 〜ミラクルストーリーを読んだ。そこから分かった儲かるネットビジネスの秘訣について書いてみる。

Hot Pepperミラクル・ストーリー―リクルート式「楽しい事業」のつくり方

Hot Pepperミラクル・ストーリー―リクルート式「楽しい事業」のつくり方

前回のエントリーでは、来るべきWeb3.0の時代には、Semantic Webのような洗練されたエージェント機能が、新しい有用な情報の候補を探し出し、個人やコミュニティを中心とした知識創造のサイクルを回していくのではないかという巨大な電子空間の中でのソーシャルネットワーク化の話を書いた。
今度は、紙媒体というアナログで超ローカルな生活情報誌が、フリーペーパーという情報掲載者から料金徴収するビジネスモデルでミラクル・ビジネスとして成功した話だ。
現在もWeb上のMixiFacebookなどのSNSではマイミクや同じ趣味仲間などのコニュニティが形成されているが、広告収入以外ではビジネスとして大きく成功しているかは疑問だ。こうしたWorld Wide Webという大海の中に浮かぶネットコミュニティが、生活密着型のビジネスとして成功するかどうかの切っ掛けをつかめればと思い、書評をかねて思うところを書いてみることにした。

ホットペッパーは、雇用保証のないアルバイトと3年という期間限定の契約社員によって作られた「しんどいけど楽しい。苦しいけどおもしろい」というインセンティブで成功したお化け事業である。失うもののない非正社員だからこそ非常識な発想でできた成功事業なのだと言うところが面白い。
また、ホットペッパー事業の検討がなされたのは、2000年で来るべきネット時代への対応を見据えて、敢えてアナログで立ち上げたとのことである。つまり、クライアントからは情報提供料というリアルで課金する仕組みを作って囲い込む一方で、ユーザーはフリーペーパーという形で囲い込みと場作りをしてブランド化し、将来的にはクライアント情報と囲い込み顧客をWebに転嫁すればいいと考えたのだと。

ということは、稼げるWebコミュニティを立ち上げるためには、最初からクライアントから課金する仕組みとユーザーを囲い込む仕組みを作っておく必要があるということなのか・・・

ホットペッパーの特徴は、最初からターゲット領域を人間の最大の欲望である飲食、居酒屋からスタートさせ、エリアは半径2キロの生活圏に照準を当てるなど選択と集中を徹底。「飲食・居酒屋・コア商圏・20件の顧客訪問」の実践といった念仏のように覚え込める必ず勝つシナリオを綿密に作り、フラットな組織と「必ず勝つ・ブレイクする」などの判りやすいビジョン(目標)とテーマの設定を行うなどして組織内での推進力を浸透させた。こうした背後での綿密な戦略立案と関係者の動員モチベーションを築けたことが成功の要因だと。

ということは、稼げるWebコミュニティを立ち上げるためにも、事前にユーザー・コンセプトを明確化しておくことは当然として、リアルなクライアントへの営業チャンネルの確立と営業関係継続(これがマネタイズの原動力)が重要だということになるのだろう。

あとは、事業立ち上げの仕組み作りについて。「市場規模などの数字で把握しておくことが重要」「勝ちパターンを絞り込んでおく」「見えないものを見に行く構想力が大事」「森を見て木を見て枝を知る」「チームを最小単位にして血流をよくする」「数字から逃げない組織を作る」など人材・組織運営論の話が意外と多い。

急成長の切っ掛けとその仕掛けについても色々書いてあるが、要はチームヘッドの率先飛び込み営業やイベント化など、体育会系のドロ臭い「人の創造性を書きたてる工夫や」「学習し力を合わせる組織になる」など、これもクライアント(情報料提供者)向け営業の組織運営論の話となっている。
顧客接点作りの仕組み化についても、情報料提供源の飲食店に対しての「同業他社や業界全体のユーザーニーズはどんなですか? という問いに対する個々の顧客への全体情報のフィードバック」などによるプチ・コンサルティング力をベースにした人間関係構築の重要性などが書かれている。こうしたプチ・コンサルティング力の発揮による顧客との人間関係構築が、情報提供料の高単価維持要因になっていると思われる。

Hot Pepper ミラクル・ストーリー」は読み進めてみると、当初の予想に反して、思った以上の営業組織運営論の本であった。リクルートはローカルな営業力の会社であると言われており、マスのブランディング力を競う電通博報堂などの広告代理店とは似て非なる会社だと思われる。この本はまさに「That'sリクルート」を象徴する本だったように思う。マーケティング=マネタイズのための顧客接点のあるべき姿を知る上では、色々示唆に富む本だった。

Webコミュニティをマネタイズして高収益化するためには、料金を提供してくれる顧客との接点作りではプチ・コンサルティング的なコンシェルジェ機能が重要になるのだろう。そして、そこには、「自分の周辺動向はわかるけど、他の人たちの周辺動向や流行は何?」といった個々の顧客への全体情報のフィードバックがコンセルジェサービスとして効果的なのだろう。Amazon.comで本を買うと「この本を買った人は○○のような本も買っています」というような情報フィードバックがあると顧客の心が揺れるように・・・

膨大な情報が彷徨うWorld Wide Webという大海において、グローカルに稼げるコミュニティが重要になるような気がする。そのためには、ネットビジネスの秘訣として、最初からクライアントから課金する仕組みとユーザーを囲い込む仕組みを明確に作っておくこと、事前のユーザー・コンセプトの明確化に加えて、顧客への営業チャンネルの確保、プチ・コンサルティング的なコンシェルジェ機能をビルトイン化しておき顧客満足度を高めることなどが重要というのが、総合的なインプリケーションとして残ったように思う。これらを実現するWeb技術とはどのようなものなのだろうか?

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