2009年度の金融市場情勢:桜散る〜株式相場も一服か・・・?

久々に金融ネタを少し。4月16日の日経平均株価は日中9030円の高値を付けたが引け値は8755円で9000円の壁は厚いようだ。私が信頼している春山昇華さんのブログ「おかねのこねた」の4月15日付けのエントリー「投資判断:日本株売却」が目に飛び込んできた。日本企業の業績悪化の改善が見えてきていない中で、米国政府を中心とする時価会計緩和や金融緩和政策による信用リスクの低下など金融市場環境の改善で先月から、桜の開花を追うように日経平均株価は急上昇。ちょっと行き過ぎだなと思ったところで、このエントリータイトルが飛び込んできた。春山氏は、投資ウェイトを中国70%継続、日本30%から15%へ下方修正、新たに現金15%を追加している。同感だ。

私は、1月5日のエントリーで実物経済悪化が急速に進み、日本国内の企業業績悪化動向を見ても坂道を転げ落ちる5合目あたりだと書いたが、その2008年度の企業決算が発表されるのは5月連休前後だ。そしてその際、2009年度の更なる業績悪化予想も発表される。
またNYタイムスでは、6月1日までに、GMに破産法(チャプター11)申請をさせるといった記事が掲載されるなど、かねてから市場で囁かれていた米国ビック3の破産なども現実のものとなってくるだろう。これらが証券市場では全て織り込まれていたと言っても、景況感の最悪期が2009年5〜6月になるだろうこととのギャップが大きい。
違和感を感じるのは、投資指標で見たグローバル市場の中での日本株の相対的割高感。日経平均のPERは42倍で、米国S&PのPER・15倍や中国上海総合指数PERの18倍に対して割高だ。業績予想が低い割りに日本株は米国市場の動きなどにつられて買われ過ぎているのだ。米国や中国並みのPERが妥当だとすれば、もう少し日本企業の2009年度業績予想が改善してくれるのを待たないといけないということだろう。

1月2日の2008年の回顧と2009年の展望のエントリーでも書いたが、今回の世界的な金融大不況がもたらす2つの大きな成果が待っていると今でも思っている。
1)1つはサブプライム問題が象徴するような過大な借金をして不動産のような大型消費をする米国型消費経済が世界経済の牽引車ではなくなったこと、
2)2つ目は、GoogleAmazonの取組みに象徴されるようにICTを活用したグローバルなオープン・ネットワーク経済化が一層進むと予想されること。

日本企業の継続的な業績回復に必要なこと
従って、日本企業の業績回復には、3月5日のエントリーで紹介した、榊原英資氏が指摘する以下のコメントのような片鱗でも見えてこないと、本当の意味でも成長性を取り戻す継続的な業績回復にはならないと思っている。でも、現実問題として、その実現は短期的には難しいだろう。だから、春山昇華氏のように日本株ウェイトを30%から15%に引き下げるのも肯ける。

「米国を見習い、これを追い越すことに注力してきた日本も曲がり角にきたのである。ものが次第に売れなくなってきているし、恐らく、この傾向が逆転することはない。」「これからの成長産業は、少なくとも先進国では製造業ではなく、農業・医療・教育などだろう。日本では今まで規制が強く、社会主義的だったこれらの分野を成長産業に育てていくことができるかどうかに、この国の将来はかかっている。

ICT分野への期待
ICT分野について言えば、2009年度は、クラウド・コンピューティングの進展やSemantic WebなどWeb3.0の展開により、固定通信かモバイル、one to oneかP2Pを問わないコミュニケーション環境やSaaSの普及による集合知の創造環境をもたらす元年になると思っている。そして、こうした新しいICT環境は、農業・医療・教育分野などで、従来の既成概念に囚われないビジネスアイデアを創出してくれるに違いないと思っている。
問題は、こうした長期ビジョンに立ったR&Dへの取組みが少ない日本のICT企業が、本気になってくれるかどうかだ。