セカイカメラが作り出すビジネスフロンティア

murakyut2009-04-11


AR(拡張現実)を実用化レベルまで進めた意義
少し情報としては古くなるけども、頓知・(Tonchidot)が開発した「セカイカメラ」は、AR(拡張現実:augmented reality)を実用化レベルまで進めたということ以上に、カメラと携帯の境目をなくし、携帯端末だけではなく、これまでのカメラの概念を変える画期的なソフトのような気がしてきた。一方で、日本の既存企業の保守性がこうした可能性の商機を逃してしまう懸念を改めて強く感じた。
セカイカメラとは、iPhone 3Gのカメラのスクリーン上に映し出された現実空間のモノにエアタグというマークが表示され、コンピュータ・ネットワーク上の情報を重ね合わせ、補足的な情報を付加する今注目されているAR(拡張現実:augmented reality)分野のアプリケーションだ。2008年9月にサンフランシスコで行われたTech Crunch50でも話題になった。(古い記事http://blogs.itmedia.co.jp/closebox/2008/09/iphonesekaicame.html
日本では、iPhone 3G向けクローズドβ版が2月に公開された。開発を進める頓智・(とんちどっと)井口尊仁社長は、春から夏ころには「App Store」で無償公開、夏までには海外向けの公開を予定しており、更には、Android携帯での展開も計画していると言う。
セカイカメラ命名した理由は、世界を丸ごと扱えるカメラという意味だそうだ。

デジタルカメラは「ネットで共有するための描写情報を取得する」機能へ概念が一変??
一方で、最近発売された面白いデバイスEye-Fi(アイファイ)という、デジタルカメラ専用の無線LAN内蔵メモリーカードがある。パソコンと無線LANを一度セットアップしておけば、あとはデジタルカメラで撮った写真が、パソコンやオンライン写真サービスに自動保存されるという優れもの。
もし、セカイカメラデジタルカメラにも内蔵され、Eye-Fiとセットになれば、デジタルカメラは「従来の写真を撮る」という機能から「ネットで共有するための描写情報を取得する」機能へ概念が一変し、一般的なAR(拡張現実)ツールになってしまう可能性を感じる。セカイカメラエアタグのフォーマットなどのAPIのオープン化も検討しており、ソーシャルなARとして大勢のユーザーに使ってもらうことも検討されている。日本から世界に打って出るプラットフォームとしてのポテンシャルも感じる。
携帯電話メーカーだけではなく、デジタルカメラメーカーにおいても、セカイカメラにもっと注目してアライアンスを組みながらAR(拡張現実)事業を拡大すると宣言する企業が出て来てもいいのではないだろうか?

何故、日本の通信事業者や機器メーカーは注目しないのか?
さて、気になったのは、こうしたシリコンバレーでも話題になったセカイカメラに対して、日本の通信事業者や機器メーカーから何らアクションがないという点だ。ベンチャー企業の流れを汲むソフトバンクテレコムのみがソリューション・プロバイダとして関わっているこらいで、寧ろ、フィンランドノキア、韓国のサムスン電子、SKテレコム、フランスのブイグテレコムなど海外のメーカーや通信事業者の方が積極的だという。
日本の通信事業者やメーカーは、技術の完成度や既存ビジネスとの親和性など、ユーザーのウォンツよりもサプライヤー側の事情を優先してしまう。そのため、ユーザーに真のサプライズをもたらすような新製品の提供はできないばかりか、サービス展開に2年も3年も時間を要してしまうため、GoogleMicrosoftのARのデファクト化の動きに遅れをとってしまうだろう。

任天堂・岩田社長の教訓
任天堂の岩田社長は、エンターテイメントの定義を「人をいい意味で驚かせるもの」だと言う。これはゲームビジネスの世界だけではなくコンシューマー向けサービス・ビジネス全般に共通する定義だと思う。岩田社長は、DSやWiiでゲームの入力方法が革新されたことについて、今までのゲームを変えるという思考の中で同時並行で変えたのではなく、新しいゲームを作っているうちに自然と発想が沸いてきたと言っている。つまり先に技術ありきではなく、ユーザーの気持ちを考えながら開発しているうちに自然と出てきたという。

セカイカメラが作り出すビジネスフロンティアを本当にWorld Wideなものにするためには、日本の周辺企業が「セカイカメラ」を開発した頓知・(Tonchidot)のようなベンチャー企業を自前で取り込もうとするのではなく、プラットフォーム的なイネブラー企業としてオープンな立場でサポート・活用しながら、ソーシャル的な新しい市場を開拓しようとする貪欲さとスピード感が必要な気がする。

人気ブログランキングへにほんブログ村 IT技術ブログ IT技術評論・デジタル評論へにほんブログ村 経営ブログ 経営企画へ