ベンチャー事業成功の条件 〜起業の条件を考える

経済の活力の源は、個々の企業家の創造性とバタリティだと思う。大企業は知らず知らずのうちにコングロマリット・ディスカウントに陥っていて、社内調整に莫大なエレルギーを取られてしまう。そのためバイタリティがそぎ落とされたり、何が創造性の原点なのかも忘れてしまいがちだ。日本はこういう大企業病の会社が多くなっているから、産業全体の活力や成長バイタリティが低下してしまうのだと思う。高齢化で労働人口が低下するから成長性が低下するというのはマクロ経済の理論ではそうかもしれないが、個々の企業活動では言い訳や守りの方便を言っているような気がしてならない。

ライフネット生命保険の起業理念
先日、インターネット専業の生命保険会社として注目を浴びているネットベンチャーライフネット生命出口治明社長の話を聞いた。
出口社長は、ベンチャー事業の成功の要件として次の5点を挙げていた。
1) ターゲットとする市場が大きいこと
2) 消費者・ユーザーの不満が大きい分野であること
3) 世の中で変えたほうがいいという風評が立っている分野であること
4) 戦略的なビジネスプラン
5) 参入障壁が高い分野か誰もが面倒臭くてやろうとしない分野
なるほど、と思った。こうした5点のうち3点くらいをクリアしていることが望ましいと。私は、この5点に加えて、ビジネス推進力の施策としてオープンソース化を付く加えてみたい。

ライフネット生命が扱う商品の生命保険の市場は、潜在的に全人口をカバーできるのだから特定ニーズを持っている人たちのユーザー市場を狙うよりは遥かに大きい。
ライフネット生命保険は、日本生命OBの出口治明氏が2006年10月に設立したネット専業の生命保険会社。これまで業界のタブーとされてきた保険料の原価の開示や高い保険料の原因の1つになっていた特約の廃止を行うなど、新しい風を吹き込むユーザーフレンドリーな生命保険ベンチャーとして注目を集めている。
出口社長は、経営理念として「どこよりも正直な経営を行い、どこよりもわかりやすくシンプルで便利で廉価な商品・サービスを新しいイノベーションにチャレンジすることを通じてお客さまに提供していきたいと」を掲げている。
従来の生命保険は、保険外交員の人件費を賄うために特約など複雑な商品を作って手数料を取ることに主眼が置かれた結果、消費者に複雑で分かりにくい生命保険を高い保険料で提供していることになっていた。こうした疑問を解決しようとして出口社長が創業したのが当社である。
当社のマーケティングは、ブログマーケティングやバナーのリンク推進、社長の精力的な講演会行脚で自社の経営理念を説くといった、愚直なまでのクチコミマーケティングだ。


手嶋屋のOpenPNE

3月28日のエントリーで紹介したオープンソース方式で開発を行ってきたSNSエンジン「OpenPNE」を展開する株式会社手嶋屋のビジネス展開も、先に挙げたベンチャー事業の成功の5要件のいくつかカバーしているように思われる。
まず、SNSエンジンを大企業は面倒なので作らないという意味で見えない参入障壁がある点、ターゲットとする市場がエンタープライズSNSで今後、ナレッジ共有やアウトソーシング事業などの潜在市場が大きいこと、ビジネス戦略としてはオープンソースで様々なナレッジを吸収すると共に先ずはあらゆる組織に「OpenPNE」を導入させ、次に有償サービス展開を図ってゆくなど発展戦略があることなど。

いずれもターゲット市場とビジネス戦略を明確に絞り込んだ後は、ソーシャルネットワークを使ったりオープンソース的な仲間作りを行っていったりという取組みが特徴だ。