WISH2009の感想とWISH2010に向けての要望

21日金曜日の晩、WISH2009というITベンチャーのビジネスアイデア発表のイベントが九段下であり参加してきた。 少し色々思うところがあったので、感想をまとめておく。
WISH2009は、ウェブの未来に焦点を当てているが、通信・コンピューティング・従来型の製造・サービス業の融合やそれぞれの事業の在り方が根本から問われている今の時代環境にあって、ウェブに焦点を当ててしまうことは本質的なIT分野の新規技術開発の発掘機会を逃してしまうのではと懸念した。
WISH2010に向けては単なるネットベンチャーの祭典に留まらないで欲しいと思った。

WISH2009自体の全体感としては、iPhoneユーザーとTwitterユーザーが多数を占めるギークなイベントだったが、不景気な世の中にあって、発表者がビジネスアイデアをぶつけ、参加者はTwitterでつぶやき講評をリアルタイムで飛び交わせる、久々に創造的な熱気が満ちた有意義なイベントだったと思う。
14のITベンチャー企業が6分間のトークの中で、自社製品やサービスをアピールして審査員と会場参加者が採点するというもので、まるでM-1グランプリのノリ。
会場の参加者は400人に達していたとのことで、席に座れないほどの人があふれ、熱気ムンムン。他の関連ブログでも書かれているが、出されていたパンは絶妙に美味しかった。
また、会場では参加者同士がTwitterでコミュニケーションが取れるようにタグが決められていて、一時はwish2009が、全世界のTwitterのトレンドランクの1位に来る勢い。


WISH 2009で気になった発表
Web系のサービスが殆どだったが、Web系ビジネスの収益性を確保することが難しくなってきていることを考えると、Webの単独サービスよりも、Webとリアルのサービスをリンクさせるサービスが事業の将来成長性が感じられ、興味が持てた。
具体的には、自宅のクッローゼットがWeb管理できるドレスファイルや唯一の家電ベンチャーCEREVO、ネットとラジコンを連携させるJokerRacer(サイドフィード)は、今までにないリアルの生活体験を提供するものとして注目したいと思った。
CEREVOのような家電ベンチャーの出現は、私も5月24日付のブログで紹介したようにUGD(User Generated Device)など、Webやコンピューティングの世界とモノ作りの世界が融合した新しいトレンドを生む可能性も今後考えられ、行き詰っている日本の製造業に対するアンチテーゼを与えるということでも意義があると思う。
ただ、CEREVOの写真自動転送サービス付きデジカメは、Eye-Fiとの差別性がどうなのか、JokerRacerも玩具というジャンルでの世界展開でどこまで市場が広げられるかの疑問は少し残ったが・・。ここに頓智・のセカイカメラが出てくるともう少し違った話題提供ができたような気もした。

WISH 2010に向けての要望
一方で、今回の発表全体を通じて気になった点は、Web系の応用サービスが中心で、クラウドコンピューティングなどの基幹技術を開発するようなベンチャーが取り上げられていなかった点は残念だ。今の日本のIT業界に求められているものはGoogleクローンなプロセス・イノベーションではなく、Webを中心に通信ネットワーク、コンピューティング、ハードウェア(ガジェット)が融合したプロダクト・イノベーションだと思う。
Cerevo以外にも、Googleクローンではない日本発の高速大量情報処理技術を開発している高速屋や、ARを活用したセカイカメラで世界市場に打って出ようとしている頓智・のようなベンチャーにも出てもらい、新しい時代要請に沿ったイベントにしてもらえれば重みも存在感も更に増すような気がする。高速屋セカイカメラについては以前、私のブログで紹介しているので、リンクしてある文字をクリックして参照していただけると有難い。

最後に:WISH 2009での発表者
WISH 2009 の発表企業14社の発表概要は以下の通り。関連記事一覧はagilemediaに譲りたい。

1.ドレスファイル
自宅のクローゼットとアパレル倉庫をWebでシンクロさせるサービスを今後展開。服がクラウドに格納され、自宅、仕事場、旅行先から取り出せる。預かるとクリーニングしてくれて倉庫で保管。所有のクラウド化とオープンなクローゼットがキーワード。他人のクローゼットの検索やフリーマーケットもできるとのこと。

2.こくばんin
子供にWeb上の掲示板でマナーを学ばせるコミュニティを運営するサービスで、任天堂DSiソフトを開発中。

3.30min.(サンゼロミニッツ)
ブロガー8,000人をバーチャル取材網として、ブログ記事解析を通じて地域、店舗を自動分類。お店と生活者の架け橋のサービスを展開する。

4.Lang-8(ランゲート)
ネット上で、グローバルベースで翻訳添削を相互にしあうサービス。165カ国以上からのアクセス実績。外国人が母国語を教えあうなど。

5.CEREVO
14社のうち唯一ガジェトを作る家電ベンチャー。撮影した写真をmixiTwitterなどに自動投稿しできるデジカメを開発中。サービスとハードを一体販売する予定。

6. xtel Inside
傘が刀になる「AMAGATANA」。Webと傘がコラボし、コンテンツが入っていないところにコンテンツをいれ、ひらめきを迅速かつ容易にカタチにすることが開発のモット。オモシロ・アイデア勝負。

7. User Insight
ブログ内のリアクションが見えるアクセス解析ツールの開発。
8.読んだ4!
Twitterでつぶやいてオープンな環境で入力される読書記録サービス。
9.JokerRacer (サイドフィード)
ネットと連携するガジェット(ラジコン)を開発。ラジコンに小型のLinuxサーバを掲載し、無線LANでコントロール。操作はブラウザから行い、iPhone対応、英語版も同時公開。
10.ソニー銀行
人生通帳サービス。自分のお金に関する情報をネット上から集めるサービスで、120以上のサービスを管理できる。お金の動きの分かるカレンダーも。
11. 日産自動車
ネット対応カーナビ・サービス。Googleマップと位置情報とカーナビの連携で現在地から近いガソリン価格の安いスタンドを探す機能など。
12.三三(リンクナレッジ)
名刺をスキャナーで読み込みネットに連携させ、人脈や社内組織などを連動させるサービス。
13. コニット
iPhone/iPod touchにおけるアプリ内でのコンテンツ課金サポートのインフラ提供サービス
14.ACTION*PAD(百式)
ウェブベースによる会議での約束管理ツールなどで日本の会議を変える。
様々な開発者にソフトを提供し、日本の開発者を元気にする。