閉塞感を打ち破るには 〜小沢一郎「日本改造計画」の実現化??

役人も責任とらないし大企業も役人と化し責任とらない。だから誰も気付かないまま衰退の道をまっしぐら・・・なんていう今の日本の閉塞感についてのやりとりがTwitterであった。日本の活力ある再生について考えてみた。
そんな中で、いよいよ衆議院選挙を明日に控えている。自民党民主党マニフェストを見比べてみると、改めて訴える力、表現力、いわゆる情報発信力の点で、民主党の圧勝を感じる。(自民党のHP民主党のHP参照)

小沢一郎の「日本改造計画」の実現化??
そして、民主党の政策特集などを見ると、背後には1993年に小沢一郎が書いた「日本改造計画」の思想が色濃く漂っていると思い、改めて、「日本改造計画」を紐解いてみた。1993年といえば1次バブル崩壊後の不景気の時期で、早くも16年前になるが、加工貿易型での外需拡大依存経済の終焉、欧米先進国というお手本に習って事実上社会主義計画経済型でJapan as No.1まで上り詰めた後の自立の道が見つからない閉塞感という状況は本質的に変わっていないように思う。
小沢一郎が「日本改造計画」で示したことは個人の自己責任の自覚による個人の自立、国家の自立であり、自己努力により結果を出すことを是とし、信賞必罰を強化していく考え方が根本にはあると思われる。仮に民主党政権になれば、16年前の日本改造計画がそのまま再現されることはないまでも、こうした考え方が色濃く反映されることになるのだろう。
因みに「日本改造計画」で掲げられた5つの自由は以下の通り。

  1. 東京からの自由〜 一極集中からの開放を意識した国土計画。地方分権
  2. 企業からの自由〜 企業に縛られた個人の解放。終身雇用、年功賃金、企業内技術訓練といった日本型企業経営など高度成長型社会からの脱皮。税金の直間比率の是正。
  3. 長時間労働からの解放
  4. 年齢と性別からの自由〜高齢者の能力活用。
  5. 規制からの自由〜管理型行政からルール型行政へ。企業も個人も自己責任

日本改造計画

日本改造計画

「この国を作り変えよう」〜日本を再生させる10の提言
一方で、マネックス社長の松本大氏と元・産業再生機構の冨山和彦氏が対談する「この国を作り変えよう」では、日本を再生させる10の提言が書かれている。
日本の現在の閉塞感と処方箋の方向性については以下のように語っている。

現代の若者が閉塞感にさいなまれているとしたら、それは団塊の世代を中心に中高年層の厚い雲が覆っているからだ。(中略)中高年層はさっさと「支配層」「管理職」「既得権者」の地位を次の世代に譲り、身体が効く間は、もう一度現場へあるいは地域へと下放していけばよい。そこで「いまどきの若者」と対等の目線で向き合い、生身でぶつかい合いながら、「ものつくりの伝統」や「日本人の本当の品格」を伝承していけばいい。
ただ、現在の日本の若者は。上の世代に比べて人口も少ないし、世界の中で比べても教育水準や技術水準が際立って突出しているというわけでもないので、急にメインステージに立たされても、すぐには結果を出せない。日本が世界の中で厳しい戦いをしばらくの間は強いられることになるのは必至だといえる。

要すれば、いきなり規制緩和の下、自己責任で世界で戦えと言っても、今の日本の若者の教育水準や技術水準は、訓練が不十分になっており世界の中でも並みの水準でしかなくなってしまい優位性はなく、世界の中ですぐに結果を出せなくなってしまっている。だから、中高年層が現場に下りて若者をサポートせよ、というものだ。
私も、ゆとり教育の弊害などもあり、その通りだと思うし、中国の若者などのアグレッシブさに比べて草食系が多いと揶揄される日本の若者の活力の弱さを考えると、しばらく日本が世界の中で厳しい戦いを強いられるというのも頷ける。

松本大氏や冨山和彦氏が掲げる日本再生の目標は、「アジアのベスト&ブライテストが集まる国に変え日本を知識集約立国にせよ」だ。そこで述べられている日本を再生させる10の提言とは以下の通り。国際競争力の回復が期待させるアグレッシブな提言だ。
【日本を若返らせる10の提言】

  1. 20代の政治家・官僚・民間人による「未来の内閣」設置
  2. 世代別選挙制度の実現(各世代別の議員定数を人口比とする)
  3. 現在の公的年金制度を解散、保険料は全額返還
  4. 地方中核都市への人口一極集中化を誘導
  5. 参議院憲法審議機関とする
  6. 正規社員と非正規社員の区別撤廃
  7. 外資系製造業を積極的に誘致し、日本国内にマザー工場設置を促す
  8. 上場企業には会社法で認められた範囲以上に厳格なルールを適用(上場企業のグローバルスタンダード経営の推進)
  9. 経済犯の罰金を不正利益の十倍ルールに変え、抑制する
  10. 戸籍制度の全廃と婚外子の権利制限撤廃

この国を作り変えよう 日本を再生させる10の提言 (講談社BIZ)

この国を作り変えよう 日本を再生させる10の提言 (講談社BIZ)

結論
基本的には、加工貿易型での外需拡大依存経済の終焉、欧米先進国というお手本に習ったキャッチアップの時代が過ぎた中で、民主党への政権交代が進めば、日本人の「お上依存」「寄らば大樹」的な精神構造を大きく変える個人の自己責任と信賞必罰の強化と、規制緩和を進めることで活力を促進させるという流れが再度強化される可能性が高いかもしれない。
さらにアグレッシブな議論の余地ができれば、松本大氏や冨山和彦氏が掲げる日本再生の目標が現実的になれば画期的だろう。
ただ、一方で、国際舞台で勝ってゆくには十分育っていない日本の若者の教育水準や技術水準の引き上げにあたって中高年齢層の現場レベルでのサポートが必要になるということだから、余り急速にアグレッシブな再生目標が掲げられても、空回りしてしまう可能性が大きいということだろう。

マスコミでは、民主党政権になったとしても「税金のバラマキ行政」が進むだけだといったような表面的な論調だけが踊るが、こうした論調に惑わされず、過去の歴史的な経緯を踏まえながらマニフェストないしその中で深く議論される具体的な政策論を注意深く吟味していくことが大事になりそうだ。