完全網羅 起業成功マニュアル 〜by ガイ・カワサキ氏

「完全網羅、起業家マニュアル」の著者、ガイ・カワサキ氏は、アップルコンピューターの草創期のエバンジェリストをした後、シリコンバレーで様々なPC企業をたちあげ、のちに、ベンチャーキャピタル「ガレージ・テクノロジーベンチャーズ」のCEOを務めている。彼の口ぶりは、本質をえぐり取るように突きつつ、とにかく熱い!!この本の冒頭で、「起業家は肩書ではない、それは未来を変えたいと思う人の心のありようだ。こうした人たちに本書を読んでいただきたい」と述べている。この著書は、ガイ・カワサキ氏のシリコンバレーでの起業の経験に基づく強烈な起業マニュアルである。そのため、書評というよりは、各章の概要を個人的な補足を加えながら備忘録として要約的にまとめておきたいと思う。

完全網羅 起業成功マニュアル

完全網羅 起業成功マニュアル

第一歩
第1章 エンジン始動の奥義
(1)意義を見出す。組織を立ち上げる最大の理由はそこに意義を見出すこと、世界をよりよい場所にする製品やサービスを作りだすことだと言う。大義名分を得たどのような製品やサービスを世に送り出すかを明確にすることが起業の原点ということなのだろう。アップルコンピュータの創業時の目標は打倒IBMだったと言う。世界の変革と社会的意義が根底に必要だと説いている。

(2)標語を決める。まどろっこしいミッションステートメントではなく、チーム全員が何をすべきか路頭に迷わないようにするための短く心地よい標語(マントラ)が必要だという。それは抽象的な一般用語は不要という。「楽しいファミリーエンターテイメント(ディズニー)」「満足を味わうひととき(スターバックス)」「考えよ(IBM)」などが優れているという。

(3)走り出す。企画・計画ばかりに拘らず、まずは走ってみることが大事だと言う。その際、「高い目標を持つこと」「パートナーを探すこと」「熱烈な利用ファンを持つ製品サービスを作り、二極化を恐れない」「その時々の流行り廃りに応じて多様に設計する」「プロトタイプを市場調査として活用する」といった大原則の実行が大事だという。

(4)ビジネスモデルを明らかにする。顧客とその悩みを明らかにすること、収益がコストを上回るような販売メカニズムをつくることがポイント。その際、具体的かつシンプルに、モノマネ可だと言う。

(5)マット(MAT:破片の飛散を防ぐ網)を織る。まずは7つのマイルストーンを達成する、即ち「コンセプトの裏付け」「具体的な設計を終える」「プロトタイプを感性させる」「資金を調達する」「テスト用の製品・サービスを顧客に提供する」「収支トントンを達成する」。
次に、仮説を絶えず追跡する、即ち「製品・サービスの評価指標」「市場規模」「粗利益」「顧客毎のROI」などが常に達成されているかの追跡。
最後に、タスク(必要業務)のリストアップ、即ち、オフィスを借りる、会計システムと給与体系の整備などなどの基盤整備だ。


明確化
第2章 ポジショニングの奥義
(1)優位性を把握する。即ち、「顧客がその起業や組織、サービスをひいきにすることでどんなメリットが享受できるか」「どうやって業界リーダーであることを証明するか」「従業員にどうやって自信を植え付けさせるか」が優位性確保のポイントになる。優れたポジショニングは、一目瞭然かつ具体的であること、コアコピテンシーが基礎となっていること、顧客にとって適合的である、長期的に顧客から支持される、ユニークである、といったメリットをもたらすという。

(2)ニッチより始めよ。顧客から評価され価格競争力も高いユニークかつニッチな製品・サービスを提供するのがベストだが、ドットコム企業の大半がユニークでもなく価格競争力もない製品・サービスを提供している。
(3)ネーミングで妥協しない。見ればそれと分る名前を付ければポジショニングも楽になるという。
(4)個人に関連付ける。ユーザーがその製品・サービスを使うとどうなるかが伝わる、平易な言葉での事業や製品・サービスの提供がよいと言う。
(5)メッセージを組織中に行き渡らせる。
(6)流れに身を任せる。市場の言うことに耳を傾ければ、市場はありのままのポジショニングを見つけてくれることも大事だと言う。

第3章 売り込みの奥義
(1)最初の一分で自分の説明をする
(2)それで?の声に答える
(3)聴衆を知る。即ち、打ち合わせの前に聴衆にとって何が重要かを調査しておく。
(4)10枚のスライドで済ます
(5)舞台を整える
(6)空想を書きたてる

第4章 事業計画作成の奥義
(1)事業計画作成がなぜ必要かは、投資家からの資金調達手続きの際、求められてくるものだからという理由の外に、創業チームの一致団結力や、見逃してきたものを浮き立たせること、創業チームに欠落しているものを明らかにできることがあると言う。
(2)計画は売り込みのあと。事業計画から抽出したポイントが売り込みではなく、売り込みを詳しくしたものが事業計画である。
(3)エグゼクティブサマリーを重視すべき。�タイトル、�問題、�解決策、�ビジネスモデル、�製品・サービスの目玉、�マーケティング・販売計画、�競合、�経営陣、�財務予想と重要指標、�現状・これまでの成果・スケジュール・資金の用途、こうしたエグゼクティブサマリーは事業計画のフレームワークでもある。
(4)読みやすく書く
(5)適正な数字を示す
(6)慎重に計画し、緊急的に行動する。即ち、製品・サービスがいつ市場に出るのか、誰がそれをいくらで買うのか、再注文してもらえるのかを事業計画には明記しながら、実現に向けて行動することが大事だと言う。

活性化
第5章 自己資本経営の奥義
(1)利益よりもキャッシュフローを重視することが自己資本経営の要諦。
(2)ボトムアップ方式で予測する。即ち、1日あたりの電話件数や成功率など具体的な変数からの積み上げで予想売上を立てることが大事。
(3)まず出荷、それからテストの発想が大事。但し、クオリティに難があればイメージにキズがつくので、事前に自分たちの製品・サービスが競合に勝っているかどうか、顧客ニーズを大いに満たしているかどうかなどを十二分に自問自答しておくことが大事だと。
(4)実績あるチームアップは諦める。即ち、著名なベテラン業界人を雇ったドリームチームを作るのは費用対効果が合わないことが大きいと言う。
(5)キャッシュフローがすぐに生じるサービス業としてスタートすることが望ましい。
(6)形式ではなく機能を重視する。即ち、法律、会計、PR、広告、ヘッドハンティングなど現実の機能性を重視した選択が大事だと言うこと。
(7)戦いの場を選ぶ。ソフトウェアを書くなど、独自のマジックを収入源にできる場からビジネスを始めるのが良いと。
(8)直販する。
(9)既に確立している市場リーダーのやり方を真似したポジショニングをすることで、マーケティングやPRコストを大幅に削減できる。
(10)人員を押さえてアウトソースする
(11)優秀な取締役会を設置することは、資金集めの助けにもなる。
(12)大局的な視点を持ち大きいことにこだわる。
(13)実行する。即ち、目標を設定して伝達する、進捗を測る、責任者を明確にする、成果を出した者に報いる、つまらなくなったから止めるということはせず最後まで続ける、実行の文化を築く、このような組織運営を定着させることが大事になる。

第6章 人材採用の奥義
自分とは考え方、能力、判断が全く違う人間を採用し、信頼、重用することが大切であると。人材採用のポイントは、?その人はあなたが必要とすることを実行できるか??その人はあなたが考える事業の意義に賛同しているか??その人にはあなたが必要とする強みがあるか・
(1)Aプレーヤーを雇う。即ち、現状のCEOや経営陣よりも優秀で、リーダーを生み出す人材を採用するのが大事だと。
(2)創業の熱意に感染した人を雇うことが大事。
(3)無意味な条件は無視する。即ち、性別、人種、宗教、年齢などは関係ない。
(4)確約を早まらない。即ち、内定通知は採用プロセスの最後に出す、などなど。

7章 資金調達の奥義
(1)事業を立ち上げる。即ち、意義があり世の中を買えるような事業を立ち上げる姿勢を示すこと。
(2)現在の投資家や弁護士・会計士、ほかの起業家、大学教授などに口をきいてもらう。
(3)売上実績を示すこと。
(4)知的財産、資本構成、経営陣、株式の付与、法令順守などで瑕疵がないようにしておく。
(5)多少瑕疵があるとしてもすべてを開示し、やましいことはないことを示すこと。
(6)競合相手がいることを示し、自社の強みと弱みをオープンにすること。

成長
第8章 パートナーシップの奥義
(1)新しい市場への参入スピードを早めるとか、新しい販売チャネルを築けるとか、コストを削減できるなどスプレッドシート上の財務予想を変える提携相手とパートナーシップを結ぶ。
(2)売上の上乗せ、新規顧客開拓など成果や目標をはっきりさせる
(3)現場の人たちに受け入れられるようなパートナーシップを結ぶ
(4)組織内の擁護派を巻き込む。即ち、それぞれの組織でキーパーソンを特定し、擁護者に権限を与えるなどが提携成功のためには大事。
(5)弱みを隠すための提携ではなく強みを更に強化する提携にすべき。
(6)ウィンウィンの関係を結ぶ
(7)終了条項を入れておく

第9章 ブランドの奥義
(1)伝染性を持たせる。即ち、クールなこと、機能の裏付けがあること、独特・常識外れ・感動的・使えば使うほど深みがあること・贅沢感・見事なサポートがあるなど。
(2)誰でも使いやすいといった障壁を低くする
(3)エバンジェリストを雇う
(4)製品・サービスを巡るコミュニティを築く
(5)人間味を出す
(6)製品・サービスを告知させるためのパブリシティを重視する
(7)従業員の全てが実行を言葉にでき、熱心に伝道活動ができるようにする

第10章 事業拡大の奥義
(1)百科斉放・百家争鳴、即ち予期せぬことが起きること歓迎する
(2)ゴリラ、即ち予期せぬ顧客や用途を見つける
(3)見込み客獲得のため、小規模な製品紹介セミナーの開催、スピーチ、出版、積極的な人脈作り、業界団体への参加などに集中し、従来型のマスマーケティングなどは行わない。
(4)カギを握る人物を探す
(5)カギを握る人物を探すための側近を取りこむ
(6)革新的な製品・サービスを受け入れない無神論者ではなく、そもそも製品やサービスを使いこなせなかった不可知論者(非消費者)を探す
(7)自社の製品・サービスを買ってもいいと考えている見込み客は、最終決断のために何が必要かを理解しているので、見込み客の意見を聞く
(8)実際に試してもらう
(9)最初は、リスクの低いごく狭い範囲や限られた方法で自社製品・サービスを使ってもらう
(10)拒絶から、如何にして更なる推奨術を向上できるか、どんな見込み客を避けるべきかを学ぶ
(11)事業拡大プロセスを管理する。即ち、社員全員に事業拡大を奨励しつづける、顧客毎に目標を設定する、先行指標をチェックする、真の成果に報いるなどにより、うちの予想は慎重だという慎重論を排除する。

責務
第11章 気高き事業遂行の奥義
社会を顧みず自分だけの利益を重んじる事業は大きくならない。また、持続可能な組織をつくりたければ、従業員に高いモラルや倫理基準を求める必要がある。こうした倫理的な組織の基本は、次の3点を実行することが大事だと。
(1)多くの人々を援助する
(2)正しい行いをする
(3)社会に還元する