ソニーのグループ事業再編発表と旧態依然としたマスコミ論調

ソニーは2009年2月27日、4月1日付でハワード・ストリンガー会長兼CEOが社長を兼務するとともに(中鉢社長は退任し2頭体制に終止符)、電機部門を大きくコンスーマー・プロダクツ・グループ(テレビ、デジタルカメラ)とネットワーク・プロダクツ&サービスグループ(ゲーム、携帯音楽プレーヤー、パソコン)の2部門に分割・再編することを発表した。
これまで電機事業から独立していたゲーム事業が携帯音楽プレーヤーやパソコン事業と統合されるとともに、テレビやデジタルカメラといったコンスーマー・プロダクツ事業が切り離されることになる。

経営指導体制は、これまで電機部門を率いてきた中鉢社長は副会長に退き、これまでゲームなどのソフト部門を中心に見てきたストリンガー氏が電機部門を含めてワンストップで見ることになる。

さて、ソニーの経営体制見直しについてのマスコミの論調はどうだろうか?
日経新聞の論調は、かつてのソニーの2人の創業者の井深氏や盛田氏といったカリスマ性がなくなった中で、ストリンガー氏が音楽、映画から電機まで含めた広い事業領域をどのように統率するのかといった指導力への不安感。加えて、「技術のソニー」という原点を問うた時に、新経営陣はそもそも電機事業へのこだわりを持ち続けるのか?と論じている。

マスコミの論調は、ストリンガー氏への指導力を問う点は分かるけど、従来型の電機という製造業を軸足に原点を問うことは、見方が旧態依然とし過ぎていると思う。
ソニーの社名の由来は、ラテン語の「SONUS」(音)と英語の「SONNY」(坊や)にあるように、ソニーは元々ウォークマンの発売に代表されるように感性に訴える商品の開発に強みを持っていた会社であり、パナソニック(旧・松下電器産業)にように電子部品の隅々までコテコテの技術力で生きてきた会社ではない。寧ろ、アップルがiPodiPhoneで世界的なヒット商品を出せて、ソニーにそれができなかった点が本質的なこれまでの経営問題だと思われる。

果たして、アップルが「技術のアップル」と呼ばれているだろうか?否、アップルは電機メーカーとして評価されている会社ではない。
2008年8月7日のエントリー「iPhoneのビジネスモデルの既存業界へのインパクト」で書いたように、アップルのビジネスモデルは、独自技術に基づく製造業のビジネスモデルではなく、基本デバイスの設計とデザインのみ行い、細かいデバイスは世界中の有力デバイスメーカーから集め、台湾のホンハイ(EMS会社)に製造委託し、グローバル市場で販売・投資回収するハード・ソフト一体かつ設計・製造の水平分業型ビジネスモデルで成長し評価された会社だ。ソニーは本来アップルにような会社として評価されるべき会社だったのが、アップルにはなりきれなかった会社だということだ。

2月22日のエントリー「日本の電子情報産業のガラパゴス化からの脱皮を考えてみる」でも書いたように、世界の電子情報産業は、米国が設計と販売・マーケティングを行い、台湾が製造を行うというというグローバル・水平分業化が進んでおり、日本はガラパゴス化している。
マスコミの論調は、こうした日本の電機メーカーが世界市場から取り残されている現状を十分認識しないまま、旧態依然とした「モノ作り技術立国・日本」という過去の遺影をなぞった評論をしているように思う。
マスコミの旧態依然とした認識が日本の電子情報産業をガラパゴス化に追いやっている原因の1つにもなっていると思うのだが。

ソニーが今回発表した経営指導体制とグループ事業の見直しについては、寧ろ、ガラパゴス化した日本・電機メーカーが世界市場へ形を変えて復帰ができるかどうかを問うものとして、今後の行方を見守ってゆく・・・という見方をした方が正しいような気がするが、どうだろうか?

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