ネットにおけるブランディングを考える 〜ネット広告放送の普及を展望して

murakyut2009-03-14


インターネットのブランド広告ネットワークのグラムメディア社の今後の成長に期待が高まっている。3月10日に、インターネット広告での世界最大の女性向け広告メディア・ネットワークの米国グラムメディアの日本法人・グラムメディア・ジャパンが動画広告サービスを開始した。グラムメディアは2006年に米国で設立され、米国で5,200万人、世界中で7,500万人のユニークユーザーが訪れる全米No.1の女性向け広告メディア。
自社で運営する「Glam」という女性サイトをハブに、高いクオリティのブランドサイトを束ねる垂直統合型広告ネットワーク会社の先駆け。日本でのサービスも2008年11月から始めた。
3月10日から始めるスポンサード動画サイトGlam TVは、リーチしたいターゲットユーザーが観たいと思われる動画を約6000以上、コンテンツプロバイダー42社の中から選び1業種1社枠としてターゲットユーザーに露出するというもの。本格的なネットにおけるブランド広告の登場だ。

これまでのネット広告は、バナー広告やGoogleやYahooの検索連動広告などPVやクリックなどパフォーマンス重視で広告出稿料金が決められてきた。そのため、広告主から見たネットサイトのブランド価値を十分考慮する余地はなかった。このため、PVの伸び悩みに伴い広告出稿量の伸び率鈍化と広告単価の低下を招き、広告収入全体の鈍化を招き自らの首を絞めてきた(2月25日付のエントリー参照)。

グラムメディアが提供するネット広告サービスは、従来のパフォーマンス重視と異なり、ネットサイトのブランド力へのリーチを基に高い単価の広告出稿を取り扱うビジネスモデルの草分けだ。

女性雑誌にあれほど広告を出しているラグジュアリーブランドがネット広告を出さないのは、ブランドイメージを維持できる高品質の媒体、コンテンツが少なく、さりとて単独サイトではリーチが十分ではなかったからだと言われている。
これまでの紙の雑誌広告の多くは、女性誌のブランド広告が多く占めていたことから、今後、グラムメディアが提供する広告サービスにより出稿できるネットでのブランド媒体が確保され、雑誌広告からネット広告へのシフトが更に加速するだろう。グラムメディア社の今後の成長期待に注目が集まっている理由がここにある訳だ。

ネットによる動画視聴時間は増え続けており、テレビ番組や映画などプレミアム・コンテンツ配信は日本でもますます市場が拡大するだろう。但し、日本の動画配信サービスは有料が多く、配信番組も一部に限られる。その背景には、ネット広告収入への懐疑の念や既存のテレビ視聴離れへの懸念があるが、第二日本テレビが無料化に踏み切ったように、今後、民放局のネット配信もいずれ広告収入モデルを模索することになろう。ここではネットワーク負担を軽減するP2Pネットワーク配信技術などインフラ技術に加えて、検索連動広告などPVやクリックなどパフォーマンス重視ではなくブランド価値重視のネット広告モデルの構築が不可欠になろう。

米国の広告動画配信サイトとしては、2008年3月から始まった4大ネットワークのNBCとFOXが共同運営する「フールー(Hulu)」が成功モデルとして注目されている。
Huluは、ケーブル局や映画配給会社をパートナーとし、ヤフーやMSNなどのポータルにも開放するなどオープン化が最大の特徴と言われている。視聴番組をブログやSNSで引用できる機能も持っているため注目率も高いようだ。テレビCMの素材をそのままHuluでも利用できるため、広告主からの評判もよく、Huluの広告収入はYouTubeを抜くとも言われており、日本のメディア業界関係者の間でも動向が注目されている。

翻って、日本ではネットメディア関係のエンジニアの間では、相変わらずYouTubeニコニコ動画などのネット動画配信ポータルに注目が集まっているようだが、メディア関係者の間では広告媒体価値としてのブランド評価は得られておらず、マニアックなポータルの域を出ていない。不特定多数の人から匿名で書き込まれる投稿内容が、広告主の商品のブランド価値を毀損するかもしれないリスク(こうしたリスクに対して広告主は広告料を支払わない)への配慮が十分なされていないためだ。
2月25日にNTTグループの3サイト(goo、OCN、plala)とマイクロソフトのMSN、ソネットエンタテイメントのSo-netドワンゴニコニコ動画の計6サイトを束ねて広告を同時掲載するメディアネットワーク広告を立ち上げると発表された。しかしながら、某広告代理店関係者によれば、ニコニコ動画以外の媒体の広告主からはブランド毀損に繋がりかねないとして、ニコニコ動画を組み入れたことで批判の声が上がったと聞いている。

今後、既存のネットメディアとマスメディアの融合が進む中で、広告収入モデルとしては、ブランド広告モデルとOne to Oneマーケティングに最も近いといわれる行動ターゲティングモデルが成長の主流になっていくように思われる。
ブランド広告モデルとしては、従来のバナー広告に代わって、雑誌広告型のモデルとしてはグラムメディアのブランド広告モデル、テレビ広告型のモデルとしては、米国のHulu型モデルに注目したい。One to Oneマーケティング型の広告モデルとしては、従来の検索連動広告に代わって、2008年7月からYahooが始めた行動ターゲティングモデルとその発展系に注目したい。行動ターゲティングモデルは、既存の検索エンジンの力を使い、掲載面、興味・関心分野、年齢・性別・職業、地域など様々なネットでの行動履歴を反映した様々なレコメンド商品が提示されるものであり、これはWeb3.0時代と呼ばれる2010年以降の意味検索によるSemantic Web時代にもさらに進化していくマネタイズモデルになるような気がする。

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