ユーザー参加型製品開発が大量生産ビジネスを変える

3月23日付の日経エレクトロニクスで「ユーザー参加の開発が大量生産ビジネスに変革を迫る」という特集が気になったので思うところを書いてみる。ガラパゴス化する製造業を脱するためには、今後、企画、開発、製造のすべての段階でオープンな環境の構築が不可欠になり、メーカー中心のモノ作りの在り方を変える必要があるという。
2月22日のエントリーで、世界最高水準の品質を誇る日本のエレクトロニクス産業も、世界最先端の技術水準にありながら、技術開発の方向性が国内に閉じてしまったため、ガラパゴス化と揶揄されるようになっていると書いた。大手家電メーカーのある技術者は「最近、メーカー側で思いつく発想をユーザーが超えてしまっていると感じることが多い」というが、新製品開発に係わる閉塞感の1つがここにあるという。

変化の兆し
従来の日本のエレクトロニクスメーカーは企画、開発、製造のうち、今でこそ製造をEMSに委託することが一般的になってきたが、基本的には社内で完結させてきた。しかし、これでは消費者の百人百様の製品ニーズを捉える商品は生み出せなくなってしまった。
そこで、最近Webのウィジェットテレビがリリースされてきたように、商品企画も数人の開発者が担い、開発にあたってもオープンソース・ソフトウェアやオープン・ネットサービスのAPIを活用する変化の動きが出てきているという。2008年9月にソニー液晶テレビで提供しているコンテンツ配信機能「アプリキャスト」用のウィジェット開発ツール(SDK)を個人向けに提供し始めたのは先進事例のひとつだ。

2020年には、大量生産体制の常識を捨てた者だけが、ユーザー参加の新しい潮流をつかめる
2020年頃には、個人や趣味で繋がるコミュニティが製品企画役を担い、オープンソース化したハードウェアや開発支援ツールが製品開発のエンジンとなり、数台単位の超小ロット生産やユーザーの手元で作るパーソナルファブリケーションが主流となるエレクトロクス製品製造のパラダイムシフトが起こるという。
具体的には、企画段階では個々の消費者の発想や発案を積極的に取り込み、開発段階では、社外に必要とする技術の募集を行い、製造もEMSへの委託に加えて究極は自分の家で作る、そして作品をネット上のコミュニティなどで自慢したり比較できるようにすることで新たな需要を喚起できるという。究極的なオープンソース戦略だ。
自分の家でテレビを作るところまでいくのは極端かもしれないが、確かに組立て加工からSDKのような開発ソフトウェアを中心とした新しいビジネスへの転換は必要だろう。

コンテンツを制作・配信する技術やノウハウは、かつて映画や放送、新聞、出版など限られたメディア企業だったが、インターネット上での動画共有サイトSNSやブログなどのコミュニティにより新しい創造プラットフォームが生まれてきている。
こうした動きはコンシューマライゼーションの進展を考慮すれば情報通信企業のみならず製造業にまで波及し、モノ作りのパラダイムシフトをもたらしていくのだろう。ガラパゴス化する日本製造業の処方箋としてだけではなく、クラウド・ネットワーク時代の新しい産業創造のビジネスパラダイムとして注目したい。

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