デジタルとアナログの対話 〜デジタルネイティブが求めるもの

今回は、これまでのエントリー内や別途メールで読者の方々から新たに提供していただいた情報やコメントを整理してインプリケーションをまとめてみようと思う。特にfutureeyeさんからは有益な情報提供やコメントをいただき感謝したい。こういう情報連携ができるところがソーシャルネットワークのいいところだと思うので、こうした双方向での知の創造を実現していきたいものだ。

1.ソーシャルネットワーク化とプロシューマーの本格化
ドン・タプスコット、アンソニー・D・ウイリアム著の「ウィキノミクス」で、ユーザー参加型製品開発への知見が展開されている。プロシューマー(プロダクション+コンシューマーを合わせた造語)という概念自体は10年位前から言われてきたのもだが、当時と違うのはSNSやソーシャルブックなどのネットワーキングツールが普及し、10〜30歳代の人々が当たり前のように使い込んでいる点。いよいよ、プロシューマーの概念が具体的な生産性に繋がるビジネスとして立証されてゆく時代に入ってきたのだと思う。


2.ITベンチャーの日米の差異
米国ではHuluなどP2Pネットワークでのメディア共有技術が成熟し、普及期に入ってきた模様だ。ただ、日本発のITベンチャーでこうした事業化で目を見張るものは未だない。何故か?米国でITコンサルをされている方のコメントによれば、日系ベンチャー企業からアドバイスを求められても、1社としてきちんとした事業目論見書が出て来ずビジネスリテラシーが低いのが原因のようだ。自分たちの市場の中での立ち位置や競合状況、差別化戦略など企画・立案するビジネス人材の不足や、ベンチャーキャピタルなどのハンズオンでの支援体制の整備が日本ではまだまだ必要だということなのだろう。技術立国・日本の明日の成長はいずこにあるのだろうか・・・?
日本発のGoogleAppleSalesforceのような世界を股にかけたITベンチャー成長企業の出現はまだまだ時間がかかりそうだ。

3.次世代マーケティングプラットフォームについて
ITマーケティングのテクノロジーは、ブログウォッチャー社が持っている自然対話エンジンのように、その日の天気・気温・ニュースなどの周辺情報と、利用者の行動履歴を取りこみ、その利用者毎の発話パターンを記憶し、ひとりひとりの利用者に沿った発話をすることで、あたかも人工知能を活用したしたようにono to one marketingを円滑にできるようにしてしまう。ただ、人間が知恵を絞らなくてはならない本質的なことは別のところにある。
政策研究大学院大学教授で内閣特別顧問黒川清さんが良いこと言っている。「確かに日本製の部品の性能はいい。しかし、それだけでは世界市場で勝負できない。アップル強いのは、売っているものがコンセプトであり、新しいコンセプトをいかに単純にしながら如何にカスタマーに届けるかに最大限の注意を図っているか」だと。
「ものづくり」は、「ものがたり=Story Telling」の一部でしかないと黒川さんは言うが、次世代マーケティングで実現しなくてはいけない点はまさにこの点。日本の電子情報産業がガラパゴス化している要因もここにあるのではないかと最近、痛感している。

このほか、IT化された次世代マーケティングでも人間が行うべき仕事はまだまだある。
(1) マッチング消費を促進するためのマーケティングプラットフォームの設計と、設計するための仮説作り(検索エンジンやマッチング広告のようなネットのテクノロジー広告が最適な分野)
(2) 商品の背後にある物語性をめあてに購入する“物語消費”では、テクノロジー広告では不十分で、次のような新世代のクリエイティブが必要になると言う。
a 信用できること
b コネクティビティ(接続性)が持続すること
つまりはマス広告のように集中豪雨的に上流から下流へ広告を流し込むのではなく、クライアントと消費者がおたがいの信頼関係を保ち、さらにその関係性を維持できるような仕組みを構築しなければならないというのだ。これからの広告は、かつてのラブレターから、デートに進化するという例えは面白い。
 今のデジタルネイティブは、人と人とのつながりの構築をネットに期待していると言われている。テレビ番組等のコンテンツの価値は“話のネタ利用”にあるという価値観を持っているという。futureeyeさんによれば、こうした“人と人とのつながりの構築”有用なものが、“物語消費”として一層重要性を増すという。


4.技術の完成度よりもユーザーインターフェースが重要
ある広告会社関係者の方とPCや携帯がブロードバンドに繋がることを前提にした次世代マーケティングプラットフォームの話をした際の反応は面白かった。今後投稿動画DB(YouTubeニコニコ動画)、人脈DB(mixiMySpace)、商品DB(楽天Amazon)などの個々の属性の括りの中にあるWebサイト同士がレコメンドエンジンやユーザーのパーソナライズ化を通じて新しいコンテンツを生み出してゆき、永遠に自己成長するという技術オリエンテッドなデータベースメディア時代へ向かってゆくのだろう。だが、こうした性急な将来展望に対しては、強力なアナログ先制パンチのコメントだった。
氏いわく、ネットワークに繋がるのはいいけど、Wii無線LAN接続率は5%程度だそうで、やっぱり電気コンセントに差し込めば、知らないうちに世界のネットワークに繋がっているように単純明快なシステムじゃないと普及しないよなぁ〜という話で盛り上がった。しかも、何故かインフラメーカーの技術者の方は、このようなインターフェースをユーザーフレンドリーにすることに労力を掛けないから困るんだよね・・・と。デジタルサイネージも、大型の屋外広告は、そもそも広告出稿者の自己満足が動機となって掲載されているという。だから、単に映像広告をネットワークに繋いでデジタルサイネージですと言ってもナンセンス。
但し、ツタヤのような特定の趣味趣向の人たちが集まる空間の中でのデジタルサイネージだけは有効ではないかと。あとは、スーパーの店頭でクックパッドが検索できて買い物商品を考えられるのはいいかも、というのが主な会話のやりとりだった。

以上、まだまだデジタルとアナログの対話をしながらバランスを取ってゆかねば、クラウド・コンピューティングの時代も単なるSFの世界で終わってしまいかねない。
SFの世界にならないようにする工夫の中にビジネスのネタはあるのだと、つくづく思う次第だ。そして、こうした現実世界こそ今のデジタルネイティブが求めているものだろう。

人気ブログランキングへにほんブログ村 IT技術ブログ IT技術評論・デジタル評論へにほんブログ村 経営ブログ 経営企画へ